レポート
台東区に生まれるイロドリ〜後編
障害福祉とカフェ。
デザインとブランディングを使って、どんな変化を生み出せるのだろうか。
これは僕たちの取り組みと成果をまとめた記録である。
「My日Sweets」毎日違くていい。違くていい事への多様性。
商品の陳列だけではそれはなかなか伝わり難い。
思想と同時に、強みであるスイーツの美味しさや素材を、プロジェクト化を通じて的を絞った訴求をする事にした。
・素材へのこだわり
心と体を豊かにできる、安心で健康的な素材を使用。
・製造へのこだわり
「1から一つ一つ丁寧に」ハンディキャップがあっても気持ちは同じ。お客様の「おいしかった」を求めて作る。
毎日違う、毎日美味しいスイーツを気持ちを込めて作る。
カフェとしてこの素晴らしい行いを、視覚化と言語化によってお客様へと伝えていく。
そこに大げさな表現はいらない。
毎日の積み重ねが自然と伝わり、広まるように設計をしていった。
行くたびに違う、美味しいスイーツを味わえる経験。
「お店に通う」という事を通じてぜひ経験をしていただきたい。
『イロドリカフェのロゴ』
元々店頭には暖簾がかけられているのがこのカフェの特徴であった。そこには既存のロゴが入っており、看板としての役割を果たしていた。
しかし、僕たちは初回の訪問から気になっていた。
何かしらの違和感。
ロゴがその店の雰囲気、内容、人々を表しきれていない。そんなひっかかりを感じていたのだ。
「店の外観で、カフェである事を主張し集客する」
これを成す為にはIRODORI caféのブランディングに適したロゴが必要と考えた。
そして様々なロゴパターンを職員や利用者の方々と考察し、思い切って新たなロゴと暖簾を製作した。
対面の道路を歩いていても認識できる主張性。カフェである事の認識。
また、度重なる打ち合わせの中でふと生まれた「珈琲と焼き菓子」というフレーズ。
シンプルでありながら、このカフェの一番大事にしているものを言葉の力で生み出してくれた。
またこのペイントは、施設の関係者である浅草の提灯職人の伝統技術によって手描き制作されている。
ぜひ背面からも暖簾を見て、手描きのぬくもりを感じて欲しい。
こちらのメニューは職員の方により自作で作り上げられている。
とてもセンス良くIRODORI caféらしいデザインで制作されているのだ。
「ロゴがある事で、デザインが良くなるよう引っ張られたんですよ」
やはり、改めてロゴというものはブランディングの屋台骨であるのだと気付かされた。
僕たちが離れた後でもブランディングが機能し続ける事がなにより大事であり、それがなされているようで嬉しい。
『ピクトグラム』
「障がい者施設浅草みらいど」は、施設内にピクトグラムを多用している。
その利便性は施設内でとても活かされており、その要素をカフェにも引っ張る事にした。
シンプルに。
的確にわかりやすく。
その中に福祉のカフェであるという要素を入れ込んだ。
車椅子マークに押す人の絵も入れたのだ。
福祉施設なのでバリアフリーなのはもちろん、カフェスタッフの皆さんも車椅子を押せる。
そして、押す人も押される人も同様にカフェを楽しんで欲しいという感情も込めた。
福祉の方々や親御さん方と関わると、押す側の気持ちも聞く。良いことも良くない事も。
押す側の人の存在の事も形にしてあげたかったのだ。
『アート』
絵を飾りたかった。
シンプルで綺麗な店内に、働く人々のイロドリをお客様に見ていただくため。
数ヶ月に渡っての毎月のデザイン支援。
その最後として皆で楽しく、利用者も支援員の方達もいっしょに描いた。
絵は、自由に描いてもらう。
何を描くとかではなく、色で、画材で遊ぶ。
その時の気持ち、考えが絵となっていく。
お店の中の雰囲気ががらっとかわった。
そこに働いている人となりを感じるアート。
これ以上にこの店にふさわしい作品はないだろう。
その時々に変わっていく絵をまた、お客さんには楽しんでいただきたい。
そこで働く人々の思いを形にする事。
それが僕たちのブランディングデザインである。
その為には時間もかかるし、生みの苦しみもある。
しかし、みらいどの方々はこう言ってくれた。
「毎回のデザイン会議が楽しかった。頭の中が洗われるようでいい刺激になるんですよ」
デザインにはそのような効果もあるのかと、また僕たちが学ばされた思いだ。
障害福祉課のがんばりにより、ひとつまたひとつと台東区に魅力が生まれていく。
福祉がオシャレを生み出す街になっていく中で、このIRODORI caféが中心地になっていくであろう。
IRODORI café(イロドリカフェ)
OPEN 月〜金10:30~15:00(第二、第四水曜日定休)
住所:〒111-0024 東京都台東区今戸2丁目14−3
TEL :03-6240-6234